理事長挨拶
ごあいさつ
私たちの真宗保育学会は浄土真宗本願寺派の保育連盟による永年にわたる準備期間を経て、1997(平成9)年に設立されて今日に至っています。真宗保育(まことの保育)において望まれる保育者像と保育実践は何に準拠すべきものなのか、それを基礎づける研究のための新たな確固たる組織が必要であるという認識のもとに、保育連盟の理事会や教育原理委員会を中心として学会設立の検討が続けられてまいりました。そして1994(平成6)年に保育連盟、宗門関係大学・短大、本願寺担当部局からの委員によって構成された「真宗保育の研究会」が誕生し、研究会から学会への移行をめざして会員を拡大し活動実績を積みあげ、遂に学会設立の日を迎えることができたのです。
このような経緯からも明らかであるように、本学会は保育連盟を母体としたものであり、実践の現場と共に歩む学会として、真宗保育(まことの保育)の学術的研究をおこなう研究者と実践をおこなう保育者との交流・研鑽の場という性格を持っています。学会である以上は不断に学会としての学術的な研究水準の向上を図りつつ、どこまでも保育実践の現場と学術研究の場を結ぶものであろうとしているところに大きな特徴があり、実際の会員構成も研究者・大学院生と乳幼児保育・教育の現場の実践者とから成っています。
現代は社会構造の変化や科学技術の進歩、人びとの生活様式や意識・価値観の変化等によって「宗教が伝わりにくくなった」「念仏の声が聞こえなくなった」と言われて久しく、ともすれば宗教の形骸化や影響力の衰退、人びとの宗教離れが言われる世俗化の進行する時代です。しかし他方では同時に宗教書があふれ宗教ブ-ムと呼ばれるような現象もあります。宗教者の方が人びとのより個人化内面化する宗教的なニ-ズや心情に応えきれていない面もあるということなのかも知れません。
こうした宗教的な環境変化だけではなく、子どもたちを取り巻く環境は少子高齢化、グロ-バル化、IT化、効率と競争重視の経済的合理性追求など急激に変貌し将来予測がますます困難になりつつあり、その中で子どもたちのこころを育てる保育・教育の重要性は一層増大しています。本学会は今後さらに親鸞聖人の生き方にまなび浄土真宗のみ教えにもとづく宗教的情操教育を基盤とした研究と実践を通して、すべての子どもたち一人ひとりが輝くことのできる社会の実現に寄与することを目指してまいります。
真宗保育学会理事長 若原 道昭